金沢大学21世紀COEプログラム『環日本海域の環境変動と長期・短期変動予測』

 事業推進担当者

日本海九十九湾に生息する有鬚動物の生理・生態の解明

教 授  笹 山  雄 一

自然計測応用研究センター
生命多様性動態学講座
[ sasayama@kenroku.kanazawa-u.ac.jp ]


 有鬚動物門のヒゲムシ類は,口や消化管が無く,硫化水素を酸化してエネルギーを得る化学合成細菌を体内に共生させ,その細菌が作る炭水化物によって生きています(図1).ヒゲムシ類は世界の冷水域や深海に棲息するが,1973年に能登半島の九十九湾(図2)からヒゲムシの一種が発見され,マシコヒゲムシと命名されました.九十九湾は対馬暖流が流れ込む水深25mの浅い海であります.したがって,本種は世界で唯一,暖流に棲む種であり,唯一,周年,採集可能な種であります.九十九湾は2万年前には山であった地域であり,なぜここに深海性のヒゲムシが棲み付いたか,日本海の成立や環境変動をさぐる上で興味深いと思います.また本種は遺伝子資源の観点からもその生理を解明することは重要と考えます.

 これまで本種の研究の基礎として筋肉系を電子顕微鏡で観察し環形動物と比較して発表しました(Zool. Sci., 2002).また完全個体が知られてなかった本種を,その終体部まで含めて世界で初めて採集に成功しました(図3)(Zool. Sci., 2003).本種の栄養体には確かに化学合成細菌が共生していることをin situ ハイブリダイゼーション法によって,またその細菌が炭素を固定するためのRuBisCo遺伝子を持つことを証明しました(Mar. Biotechnol., 2003).さらに最近, 硫化水素を無毒化する役割を担っている本種のヘモグロビンの一次構造を解明し,その全塩基配列を明らかにしました(Zool. Sci., 2005).以上を総説として,わかりやすく解説しました(うみうし通信,2003; 比較生理生化学,2004;遺伝,2004).また本種は中性脂肪を大量に持つが,脂肪の組成に深海の動物の特徴があることを見出しました.現在,本種から血栓を有効に溶かす酵素のクローニングを試みています.また,本種が海底でヒゲを出している写真を世界で初めて撮影に成功し(図4),ヒゲを出す理由も明らかにしました.












           
             Fig.1













            Fig.2

           Fig.3                   Fig.4




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