角間の里山


新聞掲載記事の紹介




2006年(平成18年)1月11日(木) 北國新聞朝刊 地方社会 19面

ワイド石川
山から燃料、灰は肥料に
炭ストーブ運転開始


写真=ストーブに炭を入れる中村研究員
  =バイオマスストーブで暖かくなった室内=金大創立五十周年記念館「角間の里」

 金大創立五十周年記念館「角間の里」で十日、「炭」を燃料とするバイオマスストーブの運転が始まった。今年は市販の炭を使用するが、将来的にはキャンパス内の里山から切り出した竹などで作った炭を使う。里山の整備と炭の使用を結びつけ、関係者は「里山保全のモデルケースにしていきたい」と意気込んでいる。

金大記念館「角間の里」 「里山保全の模範に」

 ストーブの開発は金大OBでバイオマス燃料の研究に取り組む北野滋さん(五五)=能美市=が手掛けた。ストーブと一体となったタンク内で温めた水を、土間に巡らせた配管や放射パネルを循環させることで室内を暖める。炭は薪に比べてタールや煙の排出が少なく、火持ちが良い。金大角間の里山自然学校の活動を支える「角間の里山メイト」が整備のために伐採した竹などを活用する。
 この日は、昨年十二月の試運転で分かった、煙の排出の不具合が解消されているかを確認し、ストーブに炭を入れて稼働させた。火を入れてから三時間後には、室内温度は十七度前後となり、ほんのりとした暖かさが土間に広がった。今後、一時間に入れる燃料の量などを調整し、効果的に室内を暖める方法を探る。
 ストーブで燃え残った灰を畑の肥料などにも利用し、里山整備のために伐採した樹木を余すことなくエネルギーに変える計画を立てている。金大角間の里山自然学校の中村晃規研究員は「ストーブを学生に見せることで、環境への理解を深めてほしい」と話した。





2006年(平成18年)11月10日(金) 北國新聞掲載記事 地方社会 26面

「自然学校」活用へ連携 奥能登の教育関係者 金大角間の里を視察
写真=自然学校を通した地域連携に理解を深める関係者=金大角間の里

 奥能登地区四市町の教育委員会職員や公民館主事ら二十七人が九日、金大角間の里を訪れ、自然環境の保全を目的に金大が十月に珠洲で開校した「能登半島・里山里海自然学校」との連携に向けて、同校の活用法に理解を深めた。
 参加者は金大社会貢献室の川畠平一客員教授から、棚田や竹林の再生に取り組む同校や「金大角間の自然学校」の活動の説明を受けた。同教授らは廃校を活用した珠洲の自然学校について「子どもや若者向けの自然観察会などを行うには、大学と生涯学習機関との結び付きが大切だ」と参加者に協力を求めた。





2006年10月11日(水) 北國新聞朝刊 地方社会20面

里山里海再生に拠点 金大 珠洲の自然学校開所

 金大が珠洲市で廃校となった旧小泊小の施設を拠点として活用する「能登半島・里山里海自然学校」が九月オープンし、看板除幕や記念シンポジウムが行われた。同校には金大の研究者一人と地元サポーター三人が常駐。奥能登をフィールドに地域住民、各大学・研究機関、ボランティアが連携し、里山里海の保全と再生、農林水産業振興など幅広い研究を行う。
 同校は三井物産環境基金の支援で開設された。同市のラポルトすずで行われた記念シンポジウムでは、日高敏隆総合地球環境学研究所長が基調講演した。日高氏はカブトムシ、セミ、チョウなど身近な生物を例に、自然界の複雑な仕組みとバランスを説明。生物の多様性こそが人間に最も必要で、奥能登にはその環境が残っていると強調した。
 柳哲雄九州大学教授が日本海の里山里海構想、中村浩二金大教授・角間の里山自然学校代表が能登自然学校が目指す方向性についてそれぞれ講演した。自然学校では、記念のアトラクションとして周防・猿まわしも披露された。





2006年(平成18年)8月3日(木) 北國新聞朝刊 県内統合36面

珠洲の廃校拠点に 自然学校 金大など組織網を設立
奥能登振興策を提案 今秋開講へ


 金大は、過疎や高齢化により荒廃が進む奥能登の里山や海の保全活動に乗り出す。今秋にも、自然保護や地域おこしに取り組む研究員、自治体などと協力して「能登半島・里山里海自然学校」を設立。珠洲市内の廃校となった小学校を拠点に、里山や水田の調査、研究を行い、環境に配慮した農林水産業の振興策も提案する。同大は、自然や文化などの豊かな資源に恵まれた奥能登の魅力を掘り下げ、地域活性化につなげたい考えだ。
 自然学校は、三井物産の環境基金から三年間の活動資金を得て設立する。拠点として、珠洲市三崎町の旧・小泊小を同市から借り受け、九月下旬の開講を目指す。学生や子どもを対象とした体験実習なども行う。
 今月上旬にも、金大の委嘱を受けて奥能登地区で地域活性化などに取り組む駐村研究員と地元自治体などで設立準備委員会を発足させる。県内外の他の大学の専門家も顧問に迎え、自然学校の活動に助言をしてもらう。
 金大が一昨年から珠洲市や能登町で行った住民との交流会で、大学の研究を通じて地域の活性化を進める拠点を能登につくれないかという提案があがっていた。
 「角間の里山自然学校」代表の中村浩二教授は、学校設立は過疎や里山保全など現代社会の抱える課題に取り組み、学生が具体的な問題意識をもって活動する場ができるなど、大学にとっても利点があるとする。中村教授は「大学の持つ知財を生かして活性化のお手伝いをしたい。トキやコウノトリが再びすめるような環境も取り戻したい」と話している。
 泉谷満寿裕珠洲市長は「これまで奥能登には学術的な情報発信の場がなかった。研究者と地元との交流も期待され、住民が豊かな里山に誇りを持つきっかけになる」と自然学校設立を歓迎した。

愛称を募集

 金大は「能登半島・里山里海自然学校」の愛称を県民から募集する。三十一日までで、ハガキに住所、氏名、電話番号と愛称を記入し、金沢市角間町、金大「角間の里」愛称募集係まで応募する。電子メールでも受け付けており、問い合わせは=076(264)6698=まで。





2006年(平成18年)8月3日(木) 北陸中日新聞朝刊 石川14面

金沢大 珠洲に「自然学校」 自然調査や活性化活動 三井物産が助成

 金沢大(金沢市角間町)は二日、珠洲市に「能登半島・里山里海自然学校」を設立し。今後三年間にわたり同所を拠点に奥能登の自然調査や地域活性化活動をすると発表した。事業は総額三千二百六十万円。総合商社三井物産の本年度環境基金の情勢を受けた。(沢田一朗)
 能登半東は、海と山の豊かな自然に恵まれるが、急速な過疎・高齢化の進行と、林業などの不振で里山などが管理できず荒れつつあるという。金大では、地域貢献として、奥能登の自然の保全や環境に配慮した農林水産振興策のための提言を行うことにした。
 珠洲市三崎町の閉校になった小泊小に本部を置き、金大から常駐スタッフ一人(博士クラス)を派遣。地域活性化に取り組んでいる里山駐村研究員や自治体、住民、ボランティアらと連携し、奥能登での▽棚田、里山、海の現状を示す地図の作成▽児童・生徒らの自然観察や体験実習▽棚田の補修や里山、海の保全活動−などに取り組む。
 今月上旬に設立準備委員会を発足させ、助言をしてもらう県立大や東京大の教授らによるアドバイザー会議も組織。九月下旬には、旧小泊小学校などでオープニングセレモニーや設立記念シンポジウムを開く。
 この三年間の活動実績を踏まえ、特定非営利活動法人(NPO法人)化し、さらに活動を継続していく方針だ。金大の橋本哲哉副学長は「奥能登の地域活性化のために大学の持つ知財を生かし、バックアップしていきたい」と意欲を示した。





平成17年(2005年)10月9日(日) 北陸中日新聞朝刊掲載記事 18面

国際協力で里山守ろう セミナーで事例発表

 里山の保全をテーマにしたセミナー「里山の保全 東南アジアと日本の経験」が八日、金沢市角間町の金沢大創立五十周年記念館・角間の里で開かれ、国内外の有職者らが事例発表した。
 環境や科学技術などの国際協力を研究する「いしかわ国際協力機構」の主催。ミャンマー・マンダレー大のオマー・キャウ教授や地球環境戦略研究機関の百村帝彦研究員ら四人が専門的見地から里山保全の現状分析とあり方を報告。金沢大理学部の中村浩二教授らを交えたパネルディスカッションで内容を掘り下げた。
 オマー教授は母国のマングローブ林が薪(まき)利用や農地転換で劣化が進む現状などを紹介。保全活動は資金や技術の不足などで十分な効果を発揮できていないことから、国際協力の必要性を訴えた。(片山健生)

写真:里山保全をテーマに国内外の有職者が事例発表したセミナー=金沢市角間町の金沢大創立50周年記念館・角間の里で





平成17年(2005年)3月5日 北國新聞掲載記事 かなざわ 42面

絶滅危惧種の分布拡大
金大の里山「北谷」昆虫の種類も増加

整備3年、活動実る 留学生ラマダさん調査


 金大角間キャンパスに造成した里山で絶滅危惧種に指定される植物の分布拡大や昆虫の種類が増加していることが、同大学大学院自然科学研究科の生命・地球学研究グループの調査で分かった。里山は、大学と地元住民が環境教育の教材として役立てようと3年前から管理してきたもので、地道な活動が実を結んだ格好だ。
 金大大学院自然科学研究科修士課程2年の留学生ラマダ・エカ・プトラさん(27)=インドネシア出身=が、中村浩二教授の指導で調査した。

 調査はキャンパス西北にあり、地域住民がボランティアで棚田や水田を整備した「北谷」約0.75ヘクタールで一昨年と昨年の春から秋にかけて実施した。五メートル間隔で立てたくい57本の周辺で、植物や昆虫の種類や個体数などを観察した。
 2年前に比べ昨年は花の種類が66から109、昆虫は50から75に増えた。環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種U類に指定されるキク科のオオニガナの分布は、一ヵ所から五ヵ所に広まった。研究グループは、花を覆っていた高い植物がなくなったことで、日が当たり成長しやすくなったため増えたと分析。また、これまで少なかった植物が増えたことで、みつなどを運ぶ昆虫も入り込んできた。





2004年(平成16年)12月24日 北陸中日新聞掲載記事

「里山センター」金大設置予算化 江戸期の豪農住宅、白峰から移築 
来年度政府案5600万円を計上


 金沢大(金沢市)が創立50周年事業として、石川県白峰村から金大角間キャンパス(同市角間町)に移築工事を進めている江戸時代の豪農住宅「山口新十郎家」が、2005年度から「里山教育研究センター」として北陸地方の里山保全の拠点になる。05年度政府予算案で、事業費5600万円の計上が決まった。里山の荒廃は、今秋相次いだクマ出没の原因とされる。自然と人間の共生を目指す取り組みは、大学の社会貢献活動としても注目されそうだ。(報道部・沢井秀和)

「共生」探る北陸の拠点

 「山口新十郎家」は、1720年ごろに建てられた白山ろくを代表する豪農の家。木造3階建てで延べ575平方メートルと広く、白峰村の文化財に指定されていた。
 文部科学省によると、事業は2009年までの5ヵ年計画。「里山センター」は、金大が市民を対象に1999年から続けている「里山自然学校」を発展、常設化する。キャンパス内にある74ヘクタールの里山ゾーンを、研究・教育の場として最大限に生かす。
 計画によると、生態学などの専門家の指導で若手研究者を育て、持続可能な里山管理システムの構築を目指す。中山間地農林業の経営改善や地域活性化などにつながる成果が期待される。
 学外との連携にも注力する。北陸の各自治体をはじめ、里山保全活動に取り組む全国の大学や民間非営利団体(NPO)とネットワークを組み、ボランティアや里山ガイドを養成する。さらに、学生や大学院生を北陸各地の里山に派遣、実情を調査した上で、自治体への政策提言を目指す。小中学生の自然体験を支援するプログラムも開発する。こうして得られた成果やデータは、シンポジウムなどを通じて公開していく。






2004年(平成16年)12月21日 北國新聞掲載記事

里山自然学校も充実

 金大は来年度、県や金沢市、「いしかわ里山保全活動リーダー会」と連携して開催する「角間の里山自然学校」についても内容充実を図る。角間キャンパスの豊かな自然環境を活用し、里山保全策を提案するとともに、シンポジウムの開催などで地域に根ざした学習の場の提供に取り組む。
 昨年度には県内のビジネスマンを対象とした「地域経済塾」を開講しており、来年度には「金沢学」に加え、新たな公開講座として「観光学」を開講する準備も進めている。






2004年(平成16年)10月 北國新聞掲載記事

金大里山に休憩所 棚田整備のボランティア着工
大学と地域 憩いと研究に
 11月完成

 金大角間キャンパスの里山ゾーンに、地域住民と大学関係者の憩いと交流、研究の拠点となる休憩所が、地域ボランティアの手で作られる。11日は、基礎の整備が行われ、ボランティア15人が作業に汗を流した。周辺にはビオトープも整備し、メダカなども観察できるようにする計画で、11月末までの完成を目指す。

周辺にビオトープも整備

 休憩所は地域ボランティアにより棚田復活の取り組みが行われている北谷に建設される。木造一階建てで敷地面積は約十平方メートル。囲炉裏を設けてくつろげるようにし、棚田整備などに使用する農機具などの保管庫としても利用する。
 休憩所づくりは、金大「角間の里山自然学校」の活動を支援するボランティア「里山メイト」の棚田づくりを担当するグループのメンバーが里山整備や、研究活動の拠点がほしいと発案。デザインや設計もメンバーで考えて取り掛かることとした。
 建設は元建築業の中村俊一さん(70)が“棟梁”となって指導、初回も協力し合って手際良く基礎を整えた。作業に参加した加野一昭さん(65)は「初めて体験する作業だけれど、みんなで汗を流すのが気持ちいい」と笑顔を見せた。
 棚田グループ代表の青木國弘里山自然学校幹事は「街中に近い場所にある里山は住民にとっても研究者にとっても貴重な場。その自然に触れるのにもってこいの場としたい」と話した。