温泉学  

 

006年(平成18年)4月27日(木) 北陸中日新聞朝刊 石川16面

温泉地の入浴着 学ぼう
金大・田崎教授講演 もてなし 大切さ訴え 加賀商議所


 加賀商工会議所女性部総会の記念講演会が二十六日、加賀市菅生の同会議所であり、金沢大学大学院自然科学研究科の田崎和江教授が魅力ある温泉をテーマに講演した。田崎教授はこれまでに、同市の片山津温泉で柴山潟の湖底土を利用した染め物を開発。地域の特性を生かした温泉地の魅力づくりを提案している。
 講演では多くの温泉観光地を訪ね歩いた経験を踏まえ「よかったこと」と「がっかりしたこと」を紹介。「町歩きをしようと思っても、店が全然開いてなかった」「旅館の料理に季節感がまったく感じられなかった」など、温泉地を心から楽しめない理由を挙げた。
 逆に長野県の温泉地では、がんによる乳房の切除などの手術あとがコンプレックスになっている温泉客に配慮し、入浴着の着用を推奨している活動を紹介。相手の視点に立ったもてなしの心の大切さを訴えた。(林勝)





北國新聞掲載記事
2005年(平成17年)2月5日 朝刊 37面 社会1


柴山潟 真珠の産地に 片山津活性化へ新名物 栄養分豊富「養殖いける」
商工振興会 金大と連携 月内にも実験開始


 加賀市の片山津商工振興会は、柴山潟で淡水真珠の養殖に乗り出す。温泉産業だけでなく新たな観光資源を模索していた中、金大の研究者や養殖業者から柴山潟での育成は可能との助言を受けて事業化を決めた。今月中にも潟に真珠貝を沈めて養殖実験を行い、順調な成育が確認されれば、本格的な養殖事業を開始する。同振興会では、これまでにない大きな発想の転換で観光客を呼び込み、温泉地の活性化
につなげたいとしている。
 同振興会は昨年、金大理学部地球学科の田崎和江教授のグループと連携し、柴山潟や温泉の利活用を考えるプロジェクトを進めてきた。その中で同教授が淡水真珠の養殖を提案。柴山潟の水質が淡水真珠の養殖が行われている琵琶湖に似ており、温泉の成分を含んだ水質は真珠の成長に必要なカルシウムなどのミネラルが豊富なことから、養殖が成功する可能性が高いと取り組みを勧めた。
 淡水真珠の生産は、世界では中国が中心で、国内では琵琶湖で年間3000−5000個の真珠貝が養殖されている。田崎教授の提案を受けた振興会は昨年末、滋賀県大津市で養殖を営む業者を訪ね、柴山潟での養殖は十分可能との見通しを示され、養殖の実施を決めた。
 計画では、柴山潟には琵琶湖真珠の母貝として使われているイケチョウガイを投入する。養殖実験は今月中旬以降に開始し、潟の3ヵ所に30個の真珠貝を沈めて成育状況を確認する。その後、春ごろに真珠の核を入れて、貝も本格的に投入する。振興会は真珠生産のほか、将来的には観光客に真珠の核を入れる作業を体験してもらうことも検討している。
 片山津商工振興会の永山信也会長は「柴山潟漁協にも協力を求め、豊かな温泉や自然景観に続く片山津の新たな名物になるよう地域一丸となり真珠養殖を成功させたい」と話している





2005年(平成17年)1月26日 北國新聞掲載記事 地方社会 20面

台風被害処理など紹介 金沢で資材・技術研究会

 第9回「環境の保全と緑化にかかわる資材・技術研究会」は25日、金沢市のホテル日航金沢で始まり、昨年の台風23号による被害や排水処理、汚染土壌の修復などをテーマとした研究成果が紹介された。
 大学関係者や企業から約150人が参加。金大理学部の学生が同大調整池での真珠養殖や、台風23号で北陸地方は他の地域に比べて雨が強く降ったことなどを発表した。田崎和江金大教授が片山津温泉の源泉を利用した温泉豆腐や温泉玉子、色落ちしにくい染色法などを説明した。
 最終日の26日は午前9時から開かれ、森敏東大名誉教授の基調講演や河北潟の水質浄化などについての発表がある。





2005年(平成17年)1月10日 北國新聞掲載記事 地方社会 15面

来年の開湯1200年に向け「健康保養温泉地」形成へ 
ホスピスも視野に金大が調査を開始


 2006年の開湯1200年に向け、七尾市の和倉温泉観光協会と同温泉旅館協同組合は、バリアフリーの充実や、末期症状患者のための専門治療(ホスピス)的な利用を視野に入れた「健康保養温泉地」の形成に乗り出した。長期滞在や体験型など観光客ニーズの変化をとらえると同時に、温泉研究を進める金大の協力も得て、成分、効用をあらためて分析し、癒やしと健康を前面に押し出した湯の街ならではのまちづくりを目指す。9日には金大大学院自然科学研究科の田崎和江教授(地球環境科学)らが調査に入った。
 和倉温泉では、総湯の建て替えや、複雑に入り組んだ道路網の整備など温泉街を一新する土地区画整理事業が計画されており、県が昨年から可能性調査を実施している。地元ではこうしたハードの取り組みに加え、バリアフリーやセラピー、七尾湾に面した風光明美な景観の活用、観光客の目に触れやすい泉質表示などソフト面の充実を図る必要があると判断した。
 同温泉の観光協会と旅館協同組合では、健康保養温泉地の形成に向けた第一歩として、10日に産官学協働の懇談会を同市の和倉温泉観光会館で開催する。協会と組合、市商工観光課に加え、金大の田崎教授も参加し、泉質や健康、効用について意見を交わす。学生らによる発表も行われる。
 同組合では、豊富な湯量を生かした「温泉の川」整備案や、温泉卵が味わえる温泉カフェ構想など湯煙漂う街並み形成を模索しており、大井徳秀理事長は「観光客ニーズの多様化から地域間競争は激しくなっている。健康をキーワードに和倉温泉の魅力を最大限に発揮できるまちづくりを検討したい」としている。
 懇談会に先立ち、調査に入った田崎教授は学生とともに和倉温泉の源泉を採水し、水素イオン濃度、電気伝導度、溶存酸素などを分析。田崎教授は「80度と高い水温で塩気も程よい泉質。全国屈指の観光資源であり、自然のままの活用方法を検討すべきだ」とした。

和倉温泉 大同年間(806―810年)薬師嶽の西、湯の谷に湯が湧き出たのが始まりとされている。地元の人が、白鷺が湯で傷を癒やすのを見て効用を知り、湯治に利用した。江戸時代初めには涌浦と呼ばれていたが、1674年から和倉と称されるようになり、日本海側有数の温泉地、能登の観光基地となった。神経痛や、慢性消化器病などに効用がある。





2004年(平成16年)10月13日 北國新聞掲載記事

「バイオ染め」片山津名物に 湖底土活用色落ちなし

 加賀市片山津商工振興会女性部「ふるーる片山津」は、柴山潟の湖底土を使った「バイオ染め」の観光資源化を進めるための研究に着手、12日までに、簡単な手順で短時間で染めることができ、色落ちもほとんどないことを確認した。来年度以降、観光客を呼び込む体験コーナーを設置し、新たな温泉グッズ化に結び付けたいとしている。

商工振興会女性部が研究着手スカーフ、浴衣など

 「バイオ染め」は、柴山潟の湖底土と片山津温泉の源泉を使った染色方法で、同商工振興会と共同研究を進める金大理学部の田崎和江教授が考案した。湖底土に含まれる鉄分やバクテリアの働きを利用しており、源泉のカルシウムが濃い紫色を生む効果があるとしている。
 「ふるーる片山津」のメンバーはこれまでの大学側の研究をもとに、絹と木綿を使い、泥につける回数や時間を変えながら染色実験を行った。その結果、染色に要する時間はおおむね10分以内で済むことが分かり、体験コーナーを設けて観光客に気軽に楽しんでもらう見通しもたった。
 また地元染色作家が洗濯による色落ちの度合いを調べたところ、加熱による色止めをしなくても色が安定することが確認された。スカーフや手ぬぐい、浴衣などの日用品として十分実用化できるという。
 「ふるーる片山津」事務局の鹿野富子さんは「他にはない片山津ならではの染め物として自信を持って出せるよう、さらに研究を続けたい」と意気込んでいる。





2004年(平成16年)9月7日(火) 北國新聞朝刊掲載記事

金大教授が温泉学 不動寺小

 校庭での温泉掘削を目指す金沢市不動寺小で6日、金大大学院自然科学研究科の田崎和江教授が「温泉学」を講義、6年生が温泉の成分や地質などに理解を深めた。田崎教授は、地質模型で温泉の出る仕組みなどを解説し「校庭を掘る時にどんな土が出るか調べてほしい」と話した。
 この後、児童がスコップで校庭を掘ったところ粘土が出てきて、田崎教授は「粘土で「不動寺焼き」を作ったらいい」などとアドバイスした。





2004年(平成16年)9月7日 北國新聞掲載記事


柴山潟湖底土で焼き物 加賀の陶芸家が実験成功
「片山津の新たな特産物に」


 加賀市の陶芸家2人が、片山津温泉独自の焼き物を目指し、柴山潟の湖底土を九谷焼の土と混ぜて焼く実験に成功、焼き物用粘土として使用できることを確認した。片山津温泉の資源調査を進める金大の研究者の提案で始めた初の取り組みで、地元では温泉の新たな特産物になるのではないかと期待を寄せている。
 焼き物作りに取り組んでいるのは陶芸家の苧野憲夫さん(57)=同市野田町松ヶ丘=と山下一三さん(52)=同市片山津町=。金大との共同研究の一環で、同大理学部の田崎和江教授が柴山潟で採取した湖底土を、九谷焼の粘土や釉薬、上絵の具に混ぜるなど、利用法を探ってきた。5センチ四方のテストピースを作り、土の配分や焼成方法を変えて焼いたところ、焼成による収縮は限度内に保たれ、強度も十分あり、器などを作れることが確認された。九谷焼で一般的に使われる透明の釉薬に混ぜたところ、湖底土に含まれる鉄分が茶色く粒状に表れ、ナシの皮の様な模様になることも分かった。
 商品化、量産化までにはまだ課題があるとされるが、苧野さんと山下さんは「柴山潟の土を使った焼き物に、柴山潟でとれたコイや片山津温泉の温泉卵をのせて地元の料亭で振る舞えないか」「片山津でしか手に入らないお守りのような小物をつくってはどうか」と今後の研究に意欲を見せている。
 2人は7日に同温泉で行われる「片山津e温泉プロジェクト発足講演会」で成果を発表し、住民から商品開発について意見を聞く。





2004年(平成16年)9月4日 北國新聞掲載記事

温泉学交流 住民と学生ゆったりと片山津商工振興会 空き店舗を活用

 加賀市の片山津商工振興会は、片山津温泉の空き店舗を利用した住民と学生の交流拠点作りに乗り出した。同温泉の熱源や柴山潟の湖底土の成分調査などに取り組む金大生が気軽に立ち寄り、地元住民と
地域の魅力について語り合う場とするほか、研究成果の展示コーナーも設け、地域活性化の拠点としたい考えである。
 今年度から「ゆったり湯学」と題して温泉学を進めている金大では、理学部の田崎和江教授の研究室を中心に、片山津の自然資源の科学的調査・研究を通して温泉街の活性化に協力している。 しかし、これまでは学生が調査のために同温泉を訪れても、地元住民と研究内容について話し合う機会や場が少なかった。このため同商工振興会が温泉街の中心地に位置する空き店舗を借り上げて、交流拠点として開放することにした。広さ33平方メートルの店内にテーブルといすを置いて談笑スペースをつくるほか、研究内容を解説したパネル、柴山潟の湖底土を使った染め物や焼き物などを展示し、住民にも地元の温泉の魅力に理解を深めてもらう。 片山津商工振興会の永山信也会長は「金大生はもちろん、ほかの大学生や高校生らに気軽に集まってもらい、住民と刺激しあって片山津温泉の新しい魅力を発掘する場にしてほしい」と期待を寄せている。





2004年(平成16年)8月13日 北國新聞掲載記事

金沢大構内の温泉掘削を認める答申

 温泉講座「ゆったり湯学」を今春スタートさせた金沢大(金沢市角間町)がキャンパス内の温泉掘削許可を石川県に申請し、県環境審議会温泉部会は12日、掘削を認めるよう県に答申を出した。同大では、入浴施設を併設した研究施設を建てる"キャンパス温泉"構想を描いており、費用が確保でき次第、掘削に着手する。
 文部科学省によると「大学内に温泉を掘る話は、これまで聞いたことがない」という。
 掘削予定地は、同市若松町の同大キャンパス内を流れる角間川沿いの山林内。地下1500メートルまで掘る。温泉講座を担当する田崎和江教授(理学部)の研究グループが、電磁波などを使った調査で場所を選定した。同審議会の答申を受けて、県知事が1週間程度で掘削許可を出す見通し。





2004年(平成16年)6月24日 北陸中日新聞朝刊掲載

温泉学を開講した 金沢大教授 田崎 和江 さん
正確な知識で、温泉地の復興につながれば

 温泉情報はあふれているが、科学的研究や知識は十分とはいえない。温泉とラジウムなどの放射能の関係、探査から温泉豆腐の作り方までを科学的に学ぶ「ゆったり湯学」を開講した。教えるのは、温泉のわき出し口などに見られるヌルヌルした「バイオマット」について。微生物による被膜で放射性元素を吸収する特性もあり、医療などへの応用も期待できるという。
 受講生は、200人に上ったことも。7月には活性化に協力している片山津温泉(石川県加賀市)の源泉見学を予定。「正確な知識を持つことで温泉が見直され温泉地の復興につながる」専門は地球環境科学。東京学芸大を卒業後、岡山大の研究所で大山(鳥取県)の火山灰を研究。その後、カナダで9年半、大学の主任研究員などを歴任し環境問題に取り組み始めた。
 1997年のロシアンタンカー「ナホトカ」の重油流出事故で環境汚染を調査。イラク戦争による油田炎上で発生した「すす」が風で運ばれ金沢に酸性雨を降らせたとの論文をまとめ、英国の雑誌に掲載された。

2004年度中に大学敷地内に温泉を掘る計画を進め資金集めに駆け回る。「実現すれば露天風呂などをつくりたい」娘3人は自立。夫は2年前にがんで亡くなり金沢市内で1人暮らし。長野県出身。60歳。





2004年(平成16年)6月19日 北國新聞掲載記事

「正確な知識を持つことで温泉が見直され、温泉地の復興につながる」
温泉学講座を開講した金大教授 田崎和江さん


 温泉情報はあふれているが、科学的な研究や知識はまだ十分とはいえない。温泉とラジウムなど放射能の関係、探査から温泉豆腐の作り方までを科学的に学ぶ「ゆったり湯学」を開講した。
 「長野の保健所から聴講に来る女性もいる。私自身、各分野の専門家の話を聞けて楽しい」
 自分が教えるのは、温泉のわき出し口などに見られるヌルヌルした「バイオマット」について。微生物による被膜で、放射性元素を吸収する特性もあり、医療などへの応用も期待できるという。受講生は200人に上ったことも。7月には自らが温泉街の活性化に協力している片山津温泉(加賀市)の源泉見学を予定。「正確な知識を持つことで温泉が見直され、温泉地の復興につながる」
 専門は地球環境科学。東京学芸大を卒業後、岡山大の研究所で大山(鳥取県)の火山灰を研究。その後、カナダで9年半、大学の主任研究員などを歴任し、環境問題に取り組むようになった。
 1997年のロシアタンカー「ナホトカ」の重油流出事故で環境汚染を調査。最近はイラク戦争による油田炎上で発生した「すす」が風で運ばれ金沢に酸性雨を降らせたとの論文をまとめ、英国の雑誌に掲載された。
 2004年度中に大学敷地内に温泉を掘る計画を進め資金集めに駆け回る。「実現すれば露天風呂などをつくり一般の人も入れるようにしたい」
 娘3人は自立。夫は2年前にがんで亡くなり金沢市内で1人暮らし。長野県出身。60歳。




2004年(平成16年)4月27日(火) 北國新聞朝刊掲載

金大と商工振興会 温泉通じ研究交流
●ユネスコ世界会議を誘致 ●柴山潟の染め物や焼き物 ●地下に巨大クレーター?



 温泉学を推進する金大と加賀市の片山津商工振興会は26日、同大角間キャンパスで懇談し、温泉を通じた研究交流で双方の活性化を目指すことを申し合わせた。金大側はユネスコ世界会議の誘致や柴山潟の堆積物による染め物の特産品を提案、片山津温泉の地下に巨大クレーターが存在する可能性にも言及した。片山津側は「科学の力」をフル動員する温泉地復興へ大きな期待感を示した。

金大で初会合

 
初会合は県地域産業振興課が仲介し、金大側から理学部や知的財産本部の教員5人と学生らが出席、片山津側からは商工振興会、まちづくり推進協議会、観光協会、加賀市観光商工課などの関係者7人が参加した。
 温泉学を進める田崎和江教授がユネスコ(国連教育科学文化機関)の主任顧問に就任したことを受け、同教授はユネスコの国際惑星地球年(2005−2007年)に合わせて加賀市に国際学会を誘致することを提案した。また、柴山潟にたまった泥で薄紫色に染めたTシャツや堆積物を材料にした焼き物を披露し「片山津が誇る豊かな自然は、科学的知識でさらに価値を高められる」と話した。
 古本宗光教授は金大による地下探査で片山津温泉の周辺に巨大なクレーターが存在する可能性を指摘し「太古の噴火口か隕石の落下した跡に加賀温泉郷がわいたのかもしれない」と述べた。
 片山津の関係者は、従来の町おこしの発想とは全く異なる展開に目を白黒させながらも、「大学がここまで地域のことを考えてくれているとは思わなかった」と好印象を受けた様子。片山津地区まちづくり推進協議会の岡田修三会長は「競争時代の「老舗」が抱える制度疲労は金大も片山津温泉も同じ。一緒に何ができるかを考え、共に活性化する方向を探りたい」と話している。




2004年(平成16年)4月17日(土)北陸中日新聞朝刊掲載

金大で温泉学講座開講

 温泉の医学的効能から、見つけかた、掘り方まで温泉をいろいろな切り口で学ぶ講座「ゆったり湯学」が16日、金沢大で開講した。金大は本年度中に敷地内での温泉掘削も計画しており、成功すれば大学内の温泉を利用して地震の予知や温泉内の有用微生物の研究など温泉について医学や理学、薬学など各分野で研究に取り組みたい考えだ。
 担当の田崎和江教授(地球環境科学)は「法人化の目玉にしたい」と話している。この日の受講者は予定を上回る約200人。田崎教授が温泉による衣服染めなど、温泉のさまざまな特性を紹介。各分野の専門家が「温泉と放射能」などを7月まで講義する。7月4日には加賀市の片山津温泉で源泉見学なども予定している。





2004年(平成16年)2月6日 北國新聞掲載記事

泉質の化学や掘削技術・・・金大に「ゆったり湯学」温泉構想推進へ

 金大は4月、角間キャンパスでの温泉掘削構想を推進するため、新授業「ゆったり湯学」をスタートさせる。泉質の化学や効能について教授陣が講義するほか、県内の専門家を招き、温泉のスポーツ医学や掘削技術、さらには温泉の湯で滑らかに煮込まれた「温泉豆腐」についても解説。座学に加え湯涌温泉での見学会も実施するなど、湯どころ石川ならではの授業を展開し、学内の盛り上がりに期待する。

4月から新授業

 授業は理学部の田崎和江教授(地球環境科学)が中心となり、教養的科目として4月から毎週金曜日に15回行い、単位数は2単位となっている。田崎教授のほか同学部や医学部などの教授らが日替わりで「地球と水」「間欠泉の不思議」「温泉水の化学」などのテーマで専門分野を講義する。
 温泉の医学的な効能やレジオネラ菌問題は副学長の中村信一医学部教授(医学細菌学)が担当し、北陸体力科学研究所(小松市八幡)の勝木道夫理事長がスポーツ医学について語る。温泉掘削業者の担当者が温泉の見つけ方と掘り方を紹介し、金沢市内の高校教諭も「温泉豆腐」の研究成果を発表する。
 第13回は授業を担当する全教官と学生が一緒に湯涌温泉を訪れ、教室で学んだ知識を実地で体験。温泉にまつわる文化的な意味についても考えながら、角間キャンパスでの温泉構想に意見を求めることにしている。
 角間キャンパスの温泉構想は、温泉研究の拠点を目指そうと金大の研究グループが計画し、文部科学省に科学研究費補助金を申請した。将来は足湯を整備して地域開放する構想もあり、3月にも掘削個所を決定する。
 田崎教授は「大学の使命である『教育』『研究』『社会貢献』の三拍子そろった温泉構想について学内の理解を求め、必ず成功に導きたい」と話している。





2004年(平成16年)2月3日 北國新聞掲載記事

金大角間で温泉掘削 医療や地球環境研究
来月にも個所決定 地域に開放も


 湯どころ石川で温泉研究の拠点を目指そうと、金大は角間キャンパスで温泉開発を計画し、2日までに、文部科学省に約6億円の科学研究費補助金を申請した。温泉療法をはじめ、地震予知から地球環境に至るまで「温泉」に関係するあらゆる分野を学際的に研究する。既に地下600メートル付近から40度の温泉が出る見通しが立ち、
3月中にも掘削個所を決定。将来的には足湯などが楽しめる施設を整備し、地域に開放するユニークな構想も浮上している。
 計画では、車いすのまま入浴できる施設でのリハビリテーションや温泉を飲む薬効、わき出る温泉の水質分析による地震予知、温泉の中に生息する微生物を利用したバイオ電池などの研究を想定している。同時に地域住民が大学の研究に親しむ温泉公園を整備し、温泉を活用した町づくりや経済効果などの調査研究への広がりも見込まれている。
 温泉の掘削に成功すれば、各学部が最新研究を持ち寄り、副学長の中村信一教授(医学細菌学)がレジオネラ菌の浄化システムの開発に着手し、学際科学実験センター長の山口和男教授(分子生物学)は微生物の遺伝子解析に取り組む。自然計測応用研究センターの山本政儀教授(核地球化学)は温泉の自然放射線について探り、申請代表者の田崎和江教授(地球環境科学)は温泉でできる鉱物を研究テーマに考えている。
 昨年10月の地質調査で、角間キャンパス東側に断層とみられる構造がみられたほか、同12月には電磁波探査で地下600メートル前後に水の存在を確認。角間周辺では地下の同じ地層から温泉が出ていることから、「キャンパス内でも温泉が出るのは確実だ」(田崎教授)との見方が強い。
 3月までの放射探査で掘削個所を決め、県温泉審議会から許可を得る予定にしている。
 掘削経費は固まっていないが、科学研究費補助金や企業との共同研究のほか、教職員や学生、地域住民から1口寄付を受け付ける案もあり、田崎教授は「温泉があるキャンパスが法人化後の目玉となるように、温泉計画を実現したい」と期待している。