環日本海域の里山の生物多様性:
モニタリング,アセスメント,保全
自然計測応用研究センター |
奥山と都市の中間をしめる里山は,国土の4割を占め,絶滅危惧種の5割が生息しており,生物多様性の保全のうえで重要です。里山は21世紀の人間社会が目指す自然との共生,持続的資源利用のモデルケースのひとつです。しかし,いま日本の里山は,人間の活動や開発による破壊と自然に対する働きかけの不足により危機的状況にあります(新・生物多様性国家戦略,2002)。
本研究では,主調査地を金沢大学角間キャンパス内の里山ゾーン(74ha,西太平洋・アジア生物多様性研究機構DIWPA国際生物多様性観測年IBOYの国内サイトに指定)におき,5年前から動物,昆虫,植物,キノコ等に関する生物多様性インベントリー,フェノロジー,年次変動,生物間相互関係(花粉媒介,キノコとキノコ食昆虫,鳥による種子分散など)の長期モニタリングを継続中です。本里山ゾーン内で棚田復元などの里山保全活動を実施し,それが生物多様性に及ぼす影響も調べます。林内の森林観測タワー(20m)では,気象観測と大気サンプル(アジア大陸からの黄砂,エアロゾルも含む)の採取を行っています。石川県内では金沢城公園,加賀市片野鴨池(ラムサール条約指定湿地),輪島,珠洲などの里山でも一斉調査(SBOY=Satoyama Biodiversity Observation Year, 里山生物多様性観測年)を実施し,さらに中国,韓国,ロシアを含むネットワークを立ち上げます。本調査は,環日本海の里山の現況と問題点を生物多様性モニタリングを通じて明らかにし,里山生態系を健全に保つための土地利用,保全管理法の提言をめざします。