粒径別大量粒子サンプリング装置及び
有害物質排出抑制技術の開発
金 岡 千 嘉 男 |
環日本海域の大気環境の変動を知るには,長距離輸送などにより運ばれてきた多環芳香族炭化水素(PAH,NPAH),水溶性イオン(SO42−,NO3−など),重金属成分などの環境影響物質の空間,時間変化を詳細に測定することが必要です。これらの物質は,多くの場合,単独ではなく大気中に浮遊しているエアロゾル粒子に吸着あるいは化学結合した状態で輸送されると予想されます。
環境影響因子は多岐にわたり,しかも存在状態は粒子径によっても異なります。このため,それらを測定するには,粒子径ごとに大量のサンプルを短時間のうちに取得することが必要です。そこで,慣性力を利用した大気エアロゾル粒子径別大量サンプリング装置(Fig.1)を開発するとともに,それらの分析と既存データとの比較により,大気環境の現状を明らかにします。
固定発生源からの排出有害物質の一である廃棄物熱処理に伴い発生するダイオキシン類に着目し,その有効な発生抑止技術の開発を行います。ダイオキシン類発生抑制方法として,(1)有機物の完全燃焼,(2)ダイオキシン類生成の触媒として働く金属ダスト(銅,亜鉛など)の二次生成温度以上の高温での除去,(3)ダイオキシン類二次生成温度以下までの高温排ガスの急冷を可能とするシステム(Fig.2)の開発を行うため,高温下での微量重金属の反応と挙動について検討します。さらに,粒子化した重金属類の高温集塵を活用した最適な集塵温度及び雰囲気ガス濃度を実験炉のデータと熱力学平衡計算結果の比較により明らかにした上で,多様化する廃棄物に応じたダイオキシン発生抑止を実現する廃棄物熱処理プラント運転条件の提案を行います。