北陸中日新聞朝刊1面 掲載
中国と北朝鮮の国境にそびえる長白山(2,744メートル)に、黄砂を観測する基地が夏にも金沢大(金沢市)をはじめ中国と韓国の研究所によって設置される。長白山は大陸から日本に向けて飛来する黄砂の通り道で大気汚染の実態を把握し、黄砂の飛来予測を目指す。世界の大学から大学院生を受け入れ、環境を学ぶ“学校”としても利用したい考えだ。(報道部・沢井秀和)
金大と中韓協力、夏にも設置
計画を進めるのは、日本の黄砂研究の第1人者、金沢大の岩坂泰信教授をはじめ、地球温暖化問題に詳しい中国科学院大気物理研究所の石広玉教授、韓国漢陽大の金潤信教授ら。関係者によると、標高1,000メートルを超える高山で大気を中心とした観測拠点がつくられるのはアジアでは初めてという。
基地では、大気中の黄砂をはじめ汚染物質などを調べる。中国側の山頂付近で、冬期を除き約20人が活動できるような施設とする。今夏から予備観測に入り、順次、調査項目を増やす。
数年後には北京や能登半島など日本海側での基地開設も視野に入れている。
中国・北朝鮮国境の「長白山」
「黄砂」観測へ拠点
長白山は渡り鳥の中継地でもあり、生態系調査も検討している。
黄砂をめぐっては、中国が5段階で発生を予報し、韓国では健康被害との関連が調べられ、社会問題としてとらえられている。日本でも、視界不良で航空便が欠航するなどの影響も出ている。
“環境”学校も
黄砂が発生する中央アジアのタクラマカン砂漠東部に10年前、名古屋大などが基地を設けて観測を開始。ネットワークの充実が求められており、韓国の金教授が長白山の基地づくりを提案していた。
28日から金沢市で始まったシンポジウム「環日本海域の環境計測と長期・短期変動予測」(金沢大主催)で細部を詰める。
金沢大の岩坂教授は「日本海に飛来する前の黄砂の状態を把握する意義は大きい。中国、韓国と共同設置することで、各国の研究成果を共有できる。大学院生を短期間受け入れ、次世代の研究者を育成したい」と話している。
黄砂
ゴビ砂漠などアジアの乾燥地帯で細かい粉じんが風で吹き上がり、大量の砂塵(さじん)が上空の偏西風に運ばれて日本、韓国、中国に降下する現象。空が黄褐色になる場合もある。春先に多くみられる。