北國新聞掲載記事
2004年(平成16年)7月16日 朝刊
人類未到の地球深部へ
金大主導 日本海を掘削 地震解明、資源探査も
日本海の海底を掘削し人類未到の地球深部「マントル」に到達する構想を、荒井章司金大教授(岩石学)が国際プロジェクト「統合国際深海掘削計画」に提案した。来春完成の地球深部探査船「ちきゅう」で海底を掘り抜き、地球環境や地震の解明を目指すほか、海底に眠る資源を探る。荒井教授は金大の記念碑的事業になるとして、世界の科学者に計画の誘致を働き掛けている。
世界20カ国参加
統合国際深海掘削計画は昨年10月に始まり、マントルまで海底を掘り抜くことができる世界初の探査船「ちきゅう」で、世界各地の深海底を掘る予定になっている。
荒井教授は同計画に世界各国の科学者が提案するすべての研究テーマを選別する科学立案評価パネルにおいて、日米欧から1人ずつ選ばれる共同議長に就任した。金大からは世界で38人だけの同パネル評価委員として長谷川卓助教授(地質学)も加わっている。
荒井教授は探査船「ちきゅう」を日本海に誘致し、日本列島や日本海の成り立ちを探る上で貴重な資料となる海底の岩石を採取したいと考えている。海底にたまった地層から地球環境の変化が分かるほか、地下資源の探索にもつながるという。
過去の深海掘削計画では、地球内部のマントルが対流して大陸が移動するという「プレートテクトニクス」や、恐竜絶滅の原因とされる小惑星の衝突を実証するなど輝かしい成果を上げてきた。荒井教授は、「金大が計画の主導権を発揮し、世界の注目を集める研究をしたい」と話している。
統合国際深海掘削計画(IODP) 年間150億円をかける国際的な巨大科学プロジェクトで、日米主導で約20カ国が参加する。 過去2億年の地球環境の変動を解明 巨大地震の巣を探る 新しい天然資源の発掘 地下にすむ未知の生物を探索―など、世界の科学者からさまざまな研究提案が寄せられている。
地球深部探査船「ちきゅう」(57,500トン) 統合国際深海掘削計画(IODP)の主力船で日本が約650億円かけて長崎県の造船所で建造している。2002年に進水し、掘削用のやぐらなどを立てて05年春に完成、06年に本格運航する。地球表面を覆う地殻を7キロまで掘り抜き、マントルに到達できる能力を持つ。